2006年09月15日
さて、アンタはなにを思ってこのスレを開いたんだ?
まさかとは思うが、興味なんてあるんじゃないだろうな?
まぁ、落ち着いて理由を話してくれまいか
スレタイに心ときめいたから
どんな馬鹿な世界が広がっているんだろう…と期待していたから
テラマンボウwwwwwwwwww
8 名前:VIP:2006/02/12(日) 13:05:33.59 ID:bLzo+mZi0
――あれは暑い日のことだった。
俺は、一人の少女と出会った。
少女は原子力潜水艦の艦長だった。
遺伝子操作による『優生人類』が生まれてから数年、
そういうことも少なくはないと聞いていたが、
実際に見たのは初めてだった。
13 名前:VIP:2006/02/12(日) 13:10:30.16 ID:bLzo+mZi0
「ねぇ、ここで何してるの?」
少女は俺に問い掛けた。
「……別に」
俺がぶっきらぼうに答えたのには、たいした理由があったわけではない。
ただ、俺のような劣生人類――何もされなかった人間――は、
優生人類に対して、やはり
インフェリオリティコンプレックスを抱いている、からだ。
それに、夕暮れの、一人で過ごす時間、を邪魔されたくなかった。
けれども、彼女は執拗に話し掛けてきた。
「ねぇ、ここでなにしてるの?」
砂浜に一人で座って、俺はなにをしていたのだろう?
………ただ、自分の行く末の暗さを嘆いていただけだ。
「……別に」
俺はやはり、ぶっきらぼうに答えるしかなかった。
16 名前:VIP:2006/02/12(日) 13:14:16.12 ID:bLzo+mZi0
「………海を、見ているの?」
「え?」
ぽつりと呟かれた少女の言葉に、俺は沈黙する。
海を見ている、か。今の状況に一番あっている言葉に思えた。
「……あぁ、海を見ている」
「………やっぱりそうなんだ」
少女は目を細める。
「海にはマンボウがいるもんね」
「はぁ?」
突然の言葉に、俺は少女の方に顔を向ける。
「マンボウ?」
「そう、マンボウ………ねぇ、マンボウ好き?」
「そんなもんに好きも嫌いもねぇよ」
「………そう、残念」
少女は、本当に残念そうだった。
18 名前:VIP:2006/02/12(日) 13:18:06.77 ID:bLzo+mZi0
マンボウは、この海から姿を消そうとしている。
俺たちが見られるマンボウは、
既に人工飼育に成功している数匹だけになっている。
けれども、それがなんだって言うんだ?
俺は消え行く種に想いをはせるほど繊細な心を持ち合わせては居ない。
「お前は……マンボウ好きなのか?」
俺は、何気なく聞いていた。
特に理由があったわけでもなく。
「うん、大好き」
少女は、海を見つめて、ため息をついた。
寂しそうな横顔に、俺は少しどきりとした。
24 名前:VIP:2006/02/12(日) 13:23:53.18 ID:bLzo+mZi0
「そろそろ、行くね」
「あぁ」
さようならを言う彼女を、俺は引きとめはしなかった。
俺のような存在に、彼女が声をかけてきたこと自体が稀有なことなのだ。
特に未練もなく、手を振る彼女に、俺も手を振った。
「ねぇ」
「………なんだよ」
「いつもここにいるの?」
彼女がどういうつもりで俺にそう聞いたのかはわからない。
けれども、答えなければならない気がして、俺は口を開いた。
「……あぁ、夕方はな」
少女は、ふぅん、と頷くと、のび過ぎたビルの影に消えていった。
俺はそちらに移していた視線を海に戻して、呟く。
「………ちょっと可愛かったな」
28 名前:VIP:2006/02/12(日) 13:31:30.28 ID:bLzo+mZi0
数日経ったある日。
二、三日、雨が続いていたので、海に行くのは久々な気がしていた。
コンクリートで囲われた砂浜が見えたとき、
いつもはないものが視界に入った。
(……人影?)
道路沿いに植えられた奇妙な形の木の下、
その木陰に誰かが立っていた。
自転車をこいで近づいていく俺に気づいたようで、その人影は手を振る。
確証はなかったが、何かしらの予想はついた。
あいつだ。
俺は気づかない振りをして、
人影からできるだけ離れたところに自転車を走らせた。
人影はゆっくりと近づいてくる。
影から出てきたのは、やはりあの少女だった。
30 名前:VIP:2006/02/12(日) 13:37:09.85 ID:bLzo+mZi0
自転車を降りて、砂浜に下りる。
さくさくという靴越しの感触がいつもどおり心地良い。
砂浜に、唐突に、一本だけ木が生えている。
その木陰が俺のいつもの場所だった。
日光がさえぎられている暗い場所に、俺は座り込んだ。
いつの間に来ていたのか、いつもにはない声がした。
「ねぇ」
俺は答えない。
「ねぇ」
やはり、俺は答えない。
「ねぇ」
どうしても答えようとしない俺。
少女は、黙って俺の隣に座り込んだ。
33 名前:VIP:2006/02/12(日) 13:41:37.20 ID:bLzo+mZi0
俺が木陰を占領する形となっていたので、
少女の体は木陰から半分でてしまっていた。
俺は無言で少し左に寄った。
「焼けちまうぞ、もっと詰めろよ」
俺が寄ったのは、少女の白い肌が焼けてしまうのが、
何か好ましくないように思えたからだった。
だから、俺はそれを少女に素直につげた。
「お前、肌白いんだから焼けちまうともったいないだろ?」
少女は一瞬きょとんとして、おずおずと俺のほうに動いてきた。
「………私のこと、嫌いじゃないの?」
「……好きも嫌いもねぇよ」
どういうつもりで彼女がそう聞いたのかはわからなかったが、
俺にはその質問は不思議だった。
36 名前:VIP:2006/02/12(日) 13:46:53.80 ID:bLzo+mZi0
「………昨日、来なかった、から」
俺が黙っていると、少女は話し始めた。
「昨日、来なかったから……私に会いたくないのかな、って」
さっきも避けられたし、と少女は付け足す。
「昨日って……お前、昨日は雨だったろ?」
「……うん、でも、暇な時間、少ないから」
多くは語らなかったが、俺には少女の言いたいことが理解できた。
潜水艦乗り、しかも艦長ならば、休みは少ないのだろう。
「今日は暇なのか?」
「……臨時でね。お休み」
へぇ、と俺は呟いて、視線を海に戻した。
でも、と俺は言う。
「大事な休みだろ? こんなとこに来てていいのか?」
俺は疑問を投げかける。
「もっとぱーっと遊ぶとかさ。金持ってんだろ? 艦長だし」
41 名前:VIP:2006/02/12(日) 13:50:11.20 ID:bLzo+mZi0
「持ってるけど……使うのは苦手」
贅沢すぎる悩みだった。
「で、なんで来たんだ? 俺に会うためだけ、っていうわけでもないだろ?」
「………マンボウ」
「ん?」
「マンボウ、見に行かない?」
やはり唐突な少女の言葉に、俺は驚く。
「見に行く、たって水族館か? ここからだと遠いぞ?」
俺の言葉に少女は首を横に振る。
そして、腕をまっすぐに伸ばして、人差し指を突き出す。
その先はまっすぐに海を指していた。
「お前まさか……海に………見に行くってのか?」
44 名前:VIP:2006/02/12(日) 13:54:30.82 ID:bLzo+mZi0
こくん、と少女は頷いた。
ありえない話だった。
野生のマンボウなんて何頭いるかわからないが、数は知れている。
それななのに、この広い海から見つけ出そうというのだから、
俺が驚くのにも無理はないだろう。
「野生のマンボウってお前………今何頭いると思ってんだよ」
「200匹弱、かな」
驚くことに、少女は即答した。
しかし、どちらかというと、俺はその数に驚いた。
「200……って、そんなに減ってんのか?」
「うん………」
それだけ呟いて、少女は体操座りの膝に顔をうずめた。
もごもごと、何か呟いたが、俺には良く聞こえなかった。
46 名前:VIP:2006/02/12(日) 13:57:53.11 ID:bLzo+mZi0
少女は目を上げる。
それはさも海の向こう側を見ているように。
「でもね」
少女は顔を上げて、俺のほうを見る。
「増えるといいな、って思ってるんだ」
「………そうだな」
とんだ理想論だった。
野生動物が絶滅していくのは、ある種当たり前のこととなりつつあった。
だから、そんなものを期待混じりに語るのは、
馬鹿にされるべき行動なのだろう。
けれども、マンボウが増えればいいな、という彼女の言葉は、
俺にはただの願望には聞こえなかった。
48 名前:VIP:2006/02/12(日) 14:00:49.54 ID:bLzo+mZi0
「で、なんだ? 増えるといいなっていっても、今は200匹しか居ないわけだろ?」
俺の言葉に、うん、と頷く彼女。
「だったらやっぱり……野生のマンボウなんて……」
「いるよ」
「え?」
「……いるんだ。ちゃんと、この海に、生きてる」
彼女は、やけに力強く息を吐く。
「だから、会いに、いける」
俺には何がなんだかよくわからなかったが、
彼女は『マンボウを見ることができる』と言っているのだろうか?
だとすれば。
49 名前:VIP:2006/02/12(日) 14:03:29.95 ID:bLzo+mZi0
「なぁ、見に行くか?」
「え?」
今度は少女の方が、何がなんだかよくわからなそうだった。
「俺はマンボウを見に行くか、と聞いている」
俺はきちんと解説してあげた。
彼女が、小さな肩幅の少女が、
俺がそう言うのを待っているように思えたからだ。
「…………見に行きたい」
彼女は、俺のほうに笑顔を向けた。
あまり笑ったことがなさそうな、下手な笑顔だったが、
俺にはその嬉しさは伝わってきた。
53 名前:VIP:2006/02/12(日) 14:07:45.94 ID:bLzo+mZi0
けど、と俺は疑問を口にする。
「会いに行く、たって、どうやっていくんだ?」
「船」
「船か? でもこのあたりに沖に出る船は……」
「違うよ、潜っていくの」
「………まさか、潜水艦か?」
うん、と少女は頷く。
「私の船、出せるから」
「お前の船、っていっても、他に乗組員とか居るんだろ?」
だったら、と俺は続ける。
「お前の都合だけで出せる出せないって問題じゃぁ」
「一人で、できるの」
「え?」
54 名前:VIP:2006/02/12(日) 14:11:04.02 ID:bLzo+mZi0
「一人で操縦できる……小型の」
「そんなもんがあるのか?」
俺は驚いた。
こいつとあってから、俺は驚きっぱなしだった。
「それだったら、許可取らなくても出せる、から」
えへへ、と少女は笑った。
自慢げだった。
「そっか、じゃぁ、行くか」
「うん」
立ち上がる俺に、慌てて少女は続く。
俺がジーンズの尻についた砂を払ったのを見て、
少女もショートパンツについた砂を払った。
「で、どこに泊めてあるんだ?」
「すぐそこの港。それでここまで来た、から」
55 名前:VIP:2006/02/12(日) 14:14:38.27 ID:bLzo+mZi0
俺は無言で自転車の方へ向かう。
とてとてと、後ろからついてくる足音がする。
海風が、街路樹を揺らす、さらさらという音がする。
自転車の傍で立ち止まって、俺は振り向く。
すぐ近くまで少女はきちんとついてきていた。
俺は、やはり無言で自転車にまたがる。
首をかしげる少女に、俺は片眉を上げる。
「乗れよ」
「え?」
「できるだけ急いだ方がいいだろ? 夜になっちまう」
だから、と俺は言い、自転車の二台を叩く。
「う……」
行き詰まる少女を見て、俺は気づく。
「二人乗り、したことねぇの?」
60 名前:VIP:2006/02/12(日) 14:18:26.44 ID:bLzo+mZi0
「………う、うん」
少女は何度も首を縦に振る。
「そっか……なぁ、できそうにもないか?」
「う……でき、る?」
「なんで疑問系なんだよ」
うー、とうめく少女に、俺は言う。
「できなかったらできないって言えばいい」
それだったら、と俺は言う。
「歩いていけばいいだけの話だからな」
「………できるよ」
「うん?」
俺は、聞こえない、とでもいいたげに聞き返した。
「できる、よ」
「よし、よく言った」
俺は笑って、また荷台を叩いた。
63 名前:VIP:2006/02/12(日) 14:23:30.29 ID:bLzo+mZi0
風を切って走る。
「おーい」
俺は後ろの少女に話し掛ける。
「しっかりつかまってろよ? 落ちたら怪我するぞ」
少女は無言だったが、俺の服の裾がぎゅっとつかまれるのはわかった。
俺は必死にこぐ。
俺は何のために必死になっているのだろうか?
ほぼ見ず知らずの少女を荷台に乗せて、何故走っているのか。
そういう疑問が頭の片隅をちらついたが、
すぐに海の風に乗って消えた。
俺は、この少女とマンボウを見る。
何故か、そのことだけに集中している自分がいた。
71 名前:VIP:2006/02/12(日) 14:32:19.54 ID:bLzo+mZi0
港。
港といっても、海面に泊まっている船は少ない。
ここは、ほぼ潜水艦のための港だった。
潜水艦は、地上ではなく、地下のドックにつながれている。
俺には良くわからないが、大きいのから小さいのまで
かなりの数が泊っているらしかった。
「ちょっと、待っててね」
少女は、そう言って走り出した。
港の横の建物へと入っていった。
俺は何をするでもなし、やはり夕暮れに染まる海を見ていた。
すぐに、少女は戻ってきた。
「鍵、とってきた」
そう言って、少女は一枚のカードを俺に見せた。
「こっち、ついてきて」
78 名前:VIP:2006/02/12(日) 14:39:22.43 ID:bLzo+mZi0
簡易トイレほどの建物の元へと、連れて行かれた。
ドアの横の隙間に、カードを差し込む少女。
ピー、という機械的な音に続いて、ガチャリという音がした。
ドアをあけると、そこにエレベータが待っていた。
しかし、その扉は開こうとしない。
「……水原ミナ、他ゲスト一名。承認よろしく」
どこに言うようでもなく、少女は声をだす。
こいつ、ミナっていうのか。
俺はそこではじめて名前を聞いていないことに気づいた。
『ゲスト? 部外者は困りますよ艦長〜』
「そういうな。今度奢ってやるから」
『………なんかあったら責任は艦長持ちですよ?』
「問題ない」
『…………二名、入館を許可します』
エレベータの扉が開いた。
80 名前:VIP:2006/02/12(日) 14:43:33.14 ID:bLzo+mZi0
エレベータの中で、俺はミナに問う。
「なぁ、いつもはあんなのなのか?」
「何が?」
「いや、大人っぽかったな、と思って」
俺としては、さっきのミナの言動は意外な一面だった。
「えっと、ここではちゃんとしないと……軽く見られるから」
「へぇ、お前も大変なんだな」
「仕事、だし」
少し重くなってしまった空気を何とかしようと、俺は口を開く。
「な、マンボウいるといいな」
「………いるよ」
やはり確証を持っているかのように、ミナは言う。
ミナが俺とは違うところを見ている気がして、俺は何故かどきりとした。
83 名前:VIP:2006/02/12(日) 14:47:00.79 ID:bLzo+mZi0
エレベータが止まる。
奇妙な重力の変化に、俺は軽く顔をしかめた。
ドアが開くと、ミナはすたすたと歩き出す。
地上とでは、俺とミナの立場はまるっきり逆だった。
まぁ、ミナにとってはここは庭のようなものなのだろう。
俺もすたすたとついていく。
「…………っ!」
広大な空間だった。
冗談でなしに、同じ世界とは信じられなかった。
高い天井と、どこまでも続く壁と、そして並んでいる潜水艦の数々。
どうしようもなしに、俺は絶句してしまっていた。
そんな俺に、ミナは歩きながら振り返る。
「……どうかした?」
84 名前:VIP:2006/02/12(日) 14:50:00.33 ID:bLzo+mZi0
「いや……ただ、でかいなと思って」
「………普通だよ? どちらかというと、ここはまだ小さい方」
ミナは顔を前に戻す。
「首都のドックはもっともっと大きいよ」
「………へぇ」
俺には縁のない世界だった。
そびえている、と表現しても構わないだろう潜水艦の林の中に、
ひときわ小さな潜水艦が見えた。
「なぁ、あれか?」
ミナは振り返る。
「うん……あれ以上のだと私の権限じゃ無理だから……」
「いや、潜水艦持ち出せるだけでもすげぇよ」
「そう、かな」
俺が褒めてやると、ミナはやけに嬉しそうだった。
88 名前:VIP:2006/02/12(日) 14:55:07.83 ID:bLzo+mZi0
小さな潜水艦。
近くに泊められているほかのどれよりも小さかったが、
横に立つとやはり、潜水艦らしい存在感はあった。
「こっち」
気づけば、ミナは潜水艦の側面をカンカンと上っていっているところだった。
ミナの動きは軽やかだ。
「うーん、と」
………そうでもなかった。
潜水艦の一番上で、乗り込み口を開けようとしているのだろうが、
いかんせん、ミナの細い腕では無理なようだった。
俺もカンカンと上っていく。
「ここ、あけるんだな?」
「……うん」
「どいてな」
ミナが潜水艦のお尻の方に少し下がる。
俺は今さっきまでミナがいたところまで上がってから、
力いっぱい開けてやる。
91 名前:VIP:2006/02/12(日) 15:00:13.66 ID:bLzo+mZi0
「………力持ち」
「……お前ほんとに艦長なのか?」
「う……いつもは開けててくれてるから……」
ミナは少し悔しそうだった。
「ま、俺には扉は開けられても操縦はできねぇし」
フォローしてやる俺。
こくん、とミナは頷く。
それを見て、俺は何か安心した。
「な、乗り込んでいいか?」
俺はわくわくしていた。潜水艦に乗るのなんて初めてだからだ。
「あ、私……先に入らないと」
「ん?」
「この大きさの船だと、中で位置を代わるのが難しいから」
92 名前:VIP:2006/02/12(日) 15:03:55.03 ID:bLzo+mZi0
「そうなのか」
へぇ。俺には知らない事が多い。
「じゃ、一旦俺はよけて、と」
俺は側面を下がって、ミナのために道をあける。
白くて細い足が目の前を通り過ぎていって、乗り込み口に消えていった。
俺の目線の高さにミナの顔が来る。
「乗り込んだら扉、閉めてね」
「………俺は馬鹿じゃない」
「うん、知ってる」
そう言うと、ミナの顔も乗り込み口へと消えていった。
俺も続いて乗り込むことにする。
中は鉄梯子が下まで下りていた。
初の潜水艦内部。それは予想以上に。
95 名前:VIP:2006/02/12(日) 15:07:03.82 ID:bLzo+mZi0
狭かった。
重い扉を何とか閉めてしまってから、俺は頭を下げてもぞもぞと移動する。
横からは何かのパイプが張り出していて、移動は難しかった。
それに、思い描いていたような視界はない。
俺から見える前面、ミナの前は、計器と思わしきもので埋まっていた。
「なぁ」
俺はミナに話し掛ける。
「潜水艦ってこんなもんなのか?」
「……え?」
「なにもみえねぇ」
「…………これは戦うための船だから」
「ん?」
「観光用じゃない、から」
「………そっか」
96 名前:VIP:2006/02/12(日) 15:10:42.76 ID:bLzo+mZi0
「その辺でくつろいでて」
「あぁ」
返事をしたものの、くつろげるような空間ではなかった。
けれども、一応座れるほどの空間を何とか見つけて、
俺は座り込む。
計器をいじっているミナの背中を見つめる。
すげぇな、こいつ。この年で艦長、か。
劣等感よりも先に、尊敬にも似た思いが湧きあがってきた。
それを伝えるのは俺のキャラではないので口にはださなかったが。
「出発準備完了。出港します」
「お、動くのか?」
俺が言うが早いか、潜水艦からの振動が伝わってきた。
少しの、体を引っ張られるような感覚。
動いて、いる。
俺はそれだけで感動してしまっていた。
101 名前:VIP:2006/02/12(日) 15:15:59.17 ID:bLzo+mZi0
無言で潜水艦を操縦し続けているミナに、
おれは話し掛けることができなかった。
無言の時間が続く。
けれども、その時間は決して居心地の悪いものではなかった。
小さな背中が、やけに頼りがいのあるように思えた。
俺は微笑んで、時間を待つことだけに費やすことにした。
無限とも思えるような短い時間がたった。
「海を潜ってるよ」
ミナの方から話し掛けてきた。
俺に話し掛けながらも、操作を休めない。
「話してて大丈夫なのか?」
「うん、海に出たら大丈夫。ちょっと面倒じゃなくなるから」
「そっか」
「ここは襲われる心配もないしね」
103 名前:VIP:2006/02/12(日) 15:20:01.69 ID:bLzo+mZi0
ミナがニコニコしているのがわかった。
「もう少し沖に出ると、いい海になるんだよ」
「そうなのか?」
「魚がいる。たくさんの魚。それに」
「マンボウ、か?」
「うん」
ミナは肩越しに振り返る。
「マンボウ、見せてあげるよ」
「おう、期待してる」
そう言って、俺は笑った。
どうしても自信ありげなミナだった。
知らぬ間に、俺の顔からも笑顔が漏れていたのだろう、
ミナは俺を見ながら、
自分の口の端をちょんちょんと中指で叩いて、笑った。
「俺が笑ってるのが珍しいか?」
「うん。でも……珍しい方が好きだよ」
そういって、またミナは計器のほうに顔を戻した。
105 名前:VIP:2006/02/12(日) 15:23:51.78 ID:bLzo+mZi0
また時間がたった。
「そろそろだよ、この辺りにいてもおかしくないよ、マンボウ」
「なぁ、ところで」
俺はミナに話し掛ける。
「なんでそんなに確信ありげなんだ?」
「え?」
「マンボウがいる、って、どうしてそう思うんだ?」
「あのね」
ミナは話し始める。
「マンボウ、私が育てたの」
「ん?」
「っていっても、まだ小さかった頃の話だよ?」
ミナは続ける。
「育って、大きくなって、この海に、放した」
107 名前:VIP:2006/02/12(日) 15:26:27.53 ID:bLzo+mZi0
「へぇ」
俺は相槌を打つ。
「だからね、私が会いに来ると、出てきてくれるの、マンボウ」
「………そう、なのか」
「だから、会いに来てくれるよ」
その話を聞いて、俺にはもうひとつの疑問が浮かんできた。
「なぁ、なんで俺を連れてきたんだ?」
「なんで、って?」
ミナはきょとんとする。
「お前、俺の名前もまだ知らないだろ? そんな奴をどうして」
「海、見てたから」
ミナは俺の言葉をさえぎる。
「海、寂しそうに見てたから」
俺は、何も言えなくなった。
109 名前:VIP:2006/02/12(日) 15:29:05.18 ID:bLzo+mZi0
「…………見つけた!」
ふいに、ミナが大きな声をあげる。
「いたのか?」
俺も高まってしまって、ミナにそう返す。
「わかんない……でも、多分……!」
「見てみろよ、それ、飾りじゃないんだろ?」
俺は潜望鏡を指差す。
「うん、ちょっとまって………見てみる」
潜望鏡を覗き込んで、あはは、とミナは笑う。
「ねぇ、会いに来てくれたよ、マンボウ」
114 名前:VIP:2006/02/12(日) 15:33:15.44 ID:bLzo+mZi0
「なぁ、俺にも見せてくれ」
「いいよ、ちょっとよけるね……」
ミナがよけても、俺が潜望鏡を覗けるか覗けないかほどの空間しかできなかった。
しかし、狭いなんていうことは、俺の中ではそう問題とならなかった。
俺は潜望鏡を覗きこむ。
「どこ、だ?」
俺は探す。
そして。
潜水艦のサーチライトに照らされて。
まばらな魚群の中で。
その巨体は。
優雅に。
さもここは俺の海だといわんばかりに。
大きなひれを揺らして。
「……マンボウ、だ」
俺はそれを呟くのがやっとだった。
「いた、でしょ?」
ミナの声が、暖かく俺の心に響いた。
115 名前:VIP:2006/02/12(日) 15:36:36.59 ID:bLzo+mZi0
ただ感動していた。
だから、ミナが小声で俺に何か言っていることにも最初は気づかず、
ただマンボウを見つめていた。
「………ってる」
「あ、ごめん、聞いてなかった。なんだって?」
「あたって、る」
「え?」
俺は潜望鏡から目をはずす。
思考。
俺の肩がミナの薄い胸に。
俺の手はミナの太ももを触っていた。
「…………」
「…………っ! ご、ごめん!」
俺は体を離す。少し空気は気まずくなったが、感動は覚めやらなかった。
「マンボウ、いた、な」
「………うん」
けれども、その時、断続的に、ビー、という音が鳴った。
121 名前:VIP:2006/02/12(日) 15:42:27.91 ID:bLzo+mZi0
「ん、なんだ?」
俺はミナに問い掛ける。
「通信、かな?」
俺は体をどかして、元の位置に収まる。
ミナは計器をいじり始めた。
「こうすれば……つながるかな」
『………ちら……クアフ……ト……繰り返す………こちらアク……ロント』
アクアフロント、か?
「こちら第四潜水艦隊」
ミナが通信に答える。
「こちら第四潜水艦隊。どのような目的の通信か」
『艦長に代わってくれ』
「私が艦長だ」
『………貴艦はわれわれアクアフロントの土地へ無断で侵入している』
「………この辺りは国有だったはずだが?」
128 名前:VIP:2006/02/12(日) 15:48:07.01 ID:bLzo+mZi0
『海洋開発の一端としてわれわれがこの土地は管理している』
「………そのような事実は把握していない」
『艦長、貴方が把握していなくてもそういうことなのです。
なんなら国からの委託書を提示しても構わないが』
「…………」
ミナは黙ってしまった。本当に知らなかったのだろう。
アクアフロントといえば、海洋開発の大手企業だ。
海から有用な資源を採取することが主な目的なのだが、
悪いうわさもたえない。
「………この辺りの開発内容は?」
『貴艦とは関係のないはずだが………返答を望むのなら答えましょう。
ここら一帯から新らたなエネルギー資源が見つかりましてね、
その採取を委託されたのです』
「…………この辺りの海はどうなる?」
134 名前:VIP:2006/02/12(日) 15:55:08.87 ID:bLzo+mZi0
『………生態系には問題はないはずだ』
「きちんと調査したのか?」
『……貴艦には関係のない話だと言っている
貴艦にこの一帯から出て行ってもらえれば我々はいい』
「国の船でも駐留は認められないか?」
『許可が出ているとは聞いていない』
「……国の船に見られてはならないことでもしているのか?」
『……たわけたことを言うのはやめていただこう
こちらとしては貴艦を訴えることもできるのだ』
「………そうか、すまなかったな………出航する」
ミナはそう言って、通信を切った。
「なぁ」
「………うん」
ミナがこちらを向く。
「マンボウ、危ないんじゃねぇの?」
続き。
http://guideline.livedoor.biz/archives/50234828.html
この記事へのコメント
キリンの話も…
しかもだいぶ前にw
でもスキだなこの話は
再度載せ直したの。まいいけど
ネタ切れ?
36「………昨日、来なかった、から」
49「…………見に行きたい」
63「おーい」
41「持ってるけど……使うのは苦手」
が色違い
原子力潜水艦
マンボウ
交換。
北杜夫・著「どくとるマンボウ原子力潜水艦航海記」かと思った。
あと『、』おおすぎると目臭いな
つーかちゃんと読んでから
全米が泣いた、とか
つまんね
見てないけど
とかコメントしろよ
これ良いとかいっている奴の気が知れない
すげぇなぁ。
でも脳おかしくない?
保護しようとしたら容易にできると思う。
スレ主てきとーすぎwwwwwwwwwwww
文が自己陶酔オモタ
主人公超キメエ…言葉使いとか悪くてキモ男の脳内自分にしか見えない。
ぐっとくる表現とかもあったんだけどな〜
これ、トリビアの種になりませんか?
文が全体的にキモい。
マンボウ見つけたシーンなんか恥ずかしくて見てられない。
中学何年生が書いたの?
「自分は厨です」ってアピールしてるようなもんなんだぜ?
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ただ、結婚はちょっと……^^;
気持ちはわかるが半年ROMれ
ラノベは読めない人間だな
いいんじゃない?
萌えた萌えたでこの米が埋まるよりは幾分かマシ
ゲーム化決定

